水曜日, 9月 20, 2006

有料老人ホームの本:読売新聞引用

『やっぱり「終のすみか」は有料老人ホーム』
滝上宗次郎
出版社:講談社
発行:2006年6月
ISBN:4062824043
価格:¥1680 (本体¥1600+税)

入居先選びに冷静な助言
 著者の滝上宗次郎氏は有料老人ホームの経営者である。その経営者の手になる本であり、しかもタイトルからして、きっと有料老人ホームの良いことばかり書いてあるに違いないと思われるかもしれないが、そうではない。きわめて客観的で、ときに辛口に書かれた本だ。
 入居時に多額の一時金を支払って、人生の最後を過ごすための家賃を前払いするのが有料老人ホームである。しかしそのサービスの内容について誇大広告が指摘されるほど不透明な部分も大きい。従ってそれは人生で最も大切な買い物であると同時に、もっとも危険の大きな買い物にもなる。だからこそ多くの有料老人ホームを、まだそれを冷静に見られる若いときから数多く見学しておくべきだ、と著者はいう。
 その際、ホームの経営理念は「廊下の幅で測ってください。全然、お金にはならないところですが、廊下の幅が広ければ職員は働きやすいし、いい介護ができるのです」。また「良心的ではないホームには良心的な職員はまずいられません」から、職員の定着率を入居者に聞いてみると良い。さらに「有料老人ホームの善し悪しは入居して一~二ヵ月しないとわからない」のも事実であり、そこで何よりも大切なのが、契約してから90日以内の解約であれば入居者にほとんど損害なく解約できる「解約特例」がついているかどうかだ。などと助言は明快で具体的だ。
 著者が、「やっぱり終のすみかは有料老人ホーム」というのは、将来多くの人がそうせざるをえなくなる、という認識からだ。高齢化、長寿化にともなって要介護人口はますます増えていくが、そうした人たちは早晩病院にはいられなくなり、かといって長期間の在宅介護は家族の大きな負担となる。そこで家族に負担をかけず質の高い老後を送ろうと思えば有料老人ホームがきわめて重要な選択肢となるというわけだ。その際に大切な選択眼を、プロの立場から与えてくれる本である。
 ◇たきうえ・そうじろう=1952年、東京生まれ。有料老人ホーム「グリーン東京」社長。
講談社1600円
評・清家 篤 (慶応義塾大学教授)
(2006年9月19日 読売新聞)

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