水曜日, 9月 20, 2006

有料老人ホーム連載5:読売新聞引用

第3部 有料老人ホーム
入居の時期
生活設計をしっかり
東京都内で開かれたセミナーで住み替えのポイントを説明する池田さん。「ついのすみか」に対する高齢者の関心は高い
 「老後の住まい」の選択肢として注目される有料老人ホームだが、自宅からの住み替えの時期について悩む人は多い。入居後の生活設計や資金計画をしっかり立てておくことが、上手に住み替えるコツといえそうだ。(小山孝)
目的と資金計画
 神奈川県内に住む男性(74)は最近、有料老人ホームの入居契約を結ぶ直前にキャンセルした。妻を亡くし、一戸建てに一人住まい。結婚した娘は遠方にいる。「今は健康だが、先々のことを考えると心配。ホームに入ろうと思ったが、サービスが良すぎると、かえって生活意欲が衰えるような気がして……」と住み替えのタイミングの難しさを話す。
 東京都内で暮らす女性(67)も悩みは同じ。夫と二人暮らしで、数年前からホームを探す。「元気な時は、『入居はもう少し先でも』と思うが、ちょっと病気をするとあせってしまう」
 15年前から、高齢者向け住宅の情報提供・相談に応じているNPO法人「シニアライフ情報センター」(東京都渋谷区)によると、生活に不安を感じる70歳前後から住み替えを考える人が多い。早めに住まいを移せば新しい友人が出来る可能性もある。だが、「早めの住み替えが誰にとっても良いとは限らない。老後の暮らしのイメージや転居の目的をはっきりさせておくことが大事です」と、同センター事務局長の池田敏史子さん(61)は強調する。

 元気なうちからの入居をうたっているホームも、実際に入居してみると、周りが要介護者ばかりで生活を楽しめないこともある。
 また、ホームに入れば食事や入浴など様々なサービスが提供されるため、人任せの生活になり、急に心身が衰える場合もある。「自由時間が増えるため、趣味がないと時間を持て余してしまうことも」と池田さん。
 さらに、将来に備えて元気な人が入居する場合、居室や共用部分にそれなりの空間が必要なため、入居一時金が数千万円かかることもある。「資産の大半を処分して入居した場合、生活を切り詰めざるを得ない。元気なうちに楽しめるはずの旅行や買い物を我慢することにもなりかねません」
 一方、早めの住み替えが適していると考えられる人もいる。一人暮らしで、家事や自己管理が苦手な人や、孤立感が強い人などだ。
60代になったら

 住み替えにあたっては、自己資金についても、よく検討しておく必要がある。75歳で自宅から転居した場合の経済的負担をセンターが試算したところ、いったん高齢者向け賃貸住宅などで在宅介護を受けながら生活し、要介護度が悪化した段階で入居金が数百万円台の介護付き有料老人ホームに移る方が、初めから居室や共用部分が広い有料老人ホームに入るより負担は低いという結果が出た。
 「以前は『自宅から介護施設へ』という選択肢しかなかったが、最近は高齢者専用の賃貸住宅などが出来、そこを経由する住み替えパターンも増えてきた。元気な時から入居するのか、認知症など介護が必要になってから移るのかでは、生活も費用もまるで違ってくる。60代になったら、考え始めた方がいいでしょう」と池田さんはアドバイスしている。
(2006年6月20日 読売新聞)

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